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令和6年度。第61回夏期県外史跡踏査報告

 「香取神宮・伊能図・成田空港建設~下総国で水と空と大地に生きた人々の歴史。文化を探究する~」をテーマに,2024年8月20日(火)実施。講師は曽川昌大氏(香取神宮権禰宜),平野功氏(伊能忠敬記念館館長)。箕輪有朝氏(同学芸員),木藤賢治氏(空と大地の歴史館研究員),柴田氏(成田市三里塚御料牧場記念館)にお願いした。
 午前7時45分川崎駅西口を出発し,首都高・東関道で千葉県佐原・香取方面へ。10時前に最初の踏査地香取神宮へ到着した。
 要石,総門を見学し,元禄13年(1700)徳川綱吉の命で造営された楼門【国重文】へ。昭和15年(1940)造営黒漆塗り檜皮葺の拝殿。本殿【国重文】を一周し,主祭神経津主大神(伊波比主大神)と記紀や朝廷との関係,鎌倉幕府以降の武家との関係,室町以前の20年毎式年遷宮や現在の12年毎式年神幸祭の様子について聞いた。

 ▲香取神社本殿にて
 続いて昼前に佐原の伊能忠敬記念館に入り2,345点に上る伊能忠敬関係資料【国宝】を見学。日本初の実測図作成のために行った測量・天体観測方法や器具の扱い方,小図3枚・中図8枚・大図214枚からなる『大日本沿海輿地全図』の構成や数少ない現存する実物の見どころなどについて説明を受けた。伊能忠敬旧宅【国史跡】では,忠敬が暮らした当時の建物と国宝資料が残っていた土蔵,今の5倍以上だった当時の敷地などを見学した。
 午後は,成田空港へ向かった。空と大地の歴史館では,成田空港建設前の古村,開拓部落の歴史,「三里塚闘争」とも呼ばれる空港建設反対運動や様々な事件,運動に参加した若者たちの実像,開港後地元住民や行政側が共生へと意識を変化させた様子について説明を受けた。最後の踏査地三里塚御料牧場記念館では,古代から近世の佐倉七牧について,下総牧羊場と取香種畜場,宮内省下総御料牧場について説明を受けた。
 地元の講師から地域の歴史を学び,現代の問題を受け止め未来に生きる大切さへの気付きを得て,本年の踏査も無事に終えた。
(川崎市立川崎高校 阿部功嗣)

(神奈川県高等学校教科研究会社会科部会報第93号より)