日本史研究推進委員会のページ

 新しい学習指導要領がはじまり1年半が経ちます。「歴史総合」は2年目に入り,すでに「日本史探究」が始まった学校もあります。各地の研究大会でも実践報告を拝聴したり,新たな課題を共有したりする機会が増えました。先生方におかれましても新科目で頭を悩ませているところではないでしょうか。本会では一昨年度から共同研究テーマを「神奈川の地域史研究とその教材化一歴史総合・日本史探究をどう教えるか」として「歴史総合」と「日本史探究」に向けた教材研究を進めています。「歴史総合」に関しては,世界史推進委員会と合同例会を行って議論を深めています。また,神奈川県立歴史博物館(以下,県博)とは博学連携を深め,学芸員の方にも本会の月例会に参加していただき,博物館資料の教材化に助言をいただいています。以下,4月からの活動内容を報告いたします。
 4月「関東大震災をテーマとした地域学習の実践報告」(神奈川総合産業),5月「戦国時代の政治と社会Part1」(綾瀬),6月「歴史総合の実践,駆け出し世界史探究の授業」(横浜栄,世界史推進委員会と合同),7月「「江戸」の見え方・見方-「松平造酒助江戸在勤日記」の教材化-,『松平造酒助江戸在勤日記』へのアプローチ(根本佐智子学芸員)」(神奈川総合産業,県博と共同)という内容で実施しました。
 8月4には夏季巡検を横浜方面で実施しました。午前は横浜翠嵐高校の矢野氏の案内で,根岸外国人墓地と中華義荘を見学しました。前者は1902年以降に近隣の外国人や関東大震災の被災者に加え,第2次世界大戦後に外国軍人軍属と日本人女性との間に生まれた嬰児が数多く埋葬された場所です。後者は明治期に横浜の華僑のための仮の墓地としてつくられたもので,関東大震災で亡くなられた方も埋葬されています。どちらも横浜というローカルの視点から「歴史総合」の教材になり得る場所です。午後は県博で開催されていた特別展「関東大震災-原点は100年前-」を見学し,武田周一郎学芸員に展示解説をしていただきました。その後,丹治雄一学芸員の案内で,関東大震災の火災から逃れた人々の避難場所を中心に博物館のバックヤードを見学させていただきました。当時,県博の建物は旧横浜正金銀行本店として営業していて,関東大震災では多くの命が守られました。

 ▲夏季巡検の様子(根岸外国人墓地)
 8月24日~25日には横浜翠嵐高校で日本史サマーセミナーを開催しました。全体テーマは「「歴史総合」から「日本史探究」へPart Ⅱ」で,午前は高校生向けの講義を大学教員から90分×2コマ,午後は教員向けに大学教員の報告や高校教員が実践報告を行い,最後に研究協議を行いました。2日間の内容は次の通りです。
 24日【午前】「資本主義は,人間をどのように変えたか」成田龍一(日本女子大学),「「鎖国」から「開国」ヘ-何が鎖され,何が開かれたのか-」吉村雅美(日本女子大学),【午後】「教科書はなぜ変わったのか?」伊勢弘志(明治大学)
 25日【午前】「太平洋島嶼から問い直すグローバル化」今泉裕美子(法政大学),「「満蒙開拓青少年義勇軍」論」大串潤児(信州大学)【午後】「歴史総合から探究へ」松本美加(横須賀大津高校),「2年目の歴史総合」矢野慎一(横浜翠嵐高校)「歴史総合」における“適切な"資料と問い,授業計画など実践から浮かび上がった課題に対して活発な議論が交わされました。

 ▲日本史サマーセミナー(横浜翠嵐高校)
 最後になりますが,会場を提供していただきました各学校各施設の皆さまには,この場をお借りして厚く御礼申し上げます。また,本会の活動に興味を持たれた方は,委員長の高橋までお気軽にお電話やメールでご連絡をいただければと思います。若手からベテランまでで是非一緒に学びを深めていきましょう。
(県立神奈川総合産業高校定時制 高橋俊介)

(神奈川県高等学校教科研究会社会科部会報第91号より)