高大連携講座2022「結びつく世界をどう学ぶか?-12〜14世紀のユーラシア-」

 2022年度は中央大学附属横浜高等学校を会場として高大連携講座「結びつく世界をどう学ぶか?ー12〜14世紀のユーラシア−」を実施しました。以下は今回の講座の内容です。
 本委員会の夏のメインイベントと言えるのが、高大連携講座です。3日間に渡り、毎日ひとつのテーマについて、午前中は、高校の教員と大学の教員が高校生向けに授業を行い、午後は教員で研究協議を行っております。
 一昨年度はやむなく中止になりました当講座ですが、昨年度は、生徒は対面、教員はオンラインという形で開催することができました。そして、今年度は久しぶりに生徒、教員ともが会場に集まって講座を開催することができました。
 今年度のテーマは「結びつく世界をどう学ぶか?I−12〜14世紀のユーラシア」でした。昨年度まで、近世、近代、現代(戦間期、冷戦期)の、それぞれの時代のヨーロッパの歴史を毎年のテーマに開催して参りました。歴史教育がヨーロッパ中心に寄りすぎてきたのではないかという批判がある中で、ヨーロッパ史を敢えてやるという挑戦的な試みでした。(その前の約10年間はアジアをテーマに開催していました。)講座をやる中で明らかになったのは、我々の考えてきた「ヨーロッ パ」というのは、フランスなど一部の地域の歴史を指すに過ぎず、ヨーロッパ全体には多様な歴史が存在するのだということでした。言い換えれば、ヨーロッパ中心の歴史は、ヨーロッパすらとらえられていなかったということなのです。それは、この講座で複数回にわたり講師を務めていただいている中澤達哉先生が編集を務め、コーディネーターをお願いしている古谷大輔先生も執筆に参加している『王のいる共和制』(岩波書店)を読んでいただければ、そのことがイメージできるかもしれません。ぜひご一読ください。
 そして、今年度からは、先述した通り、時代ごとの地域のつながりをテーマに行っていくことにしました。新科目『世界史探究』では、地域ごとの歴史ではなく、地域間のつながりを踏まえた歴史に注目することを意図してテーマを設定しました。3日間のテーマと講師は以下の通りです。(社会科部会報第89号より)
8月9日(火)    「12〜14世紀のユーラシア東部」
午前:高校教員教員による授業   講師 松本 美加(県立横須賀大津高校)
   大学教員による授業        講師 向 正樹(同志社大学)
午後:当日の授業実践・テーマに関する研究協議
午前(後半) 大学教員による授業のようす
8月10日(水) 「12〜14世紀のユーラシア西部」
午前:高校教員による授業  講師 野々山 新(愛知県立大府高校)
    大学教員による授業  講師 高田 良太(駒澤大学)
午後:当日の授業実践・テーマに関する研究協議
8月11日(木) 「12〜14世紀の経験とユーラシアの道程」
午前:高校教員による授業  講師 福本 淳(栄光学園高校)
    大学教員による授業  講師 古谷 大輔(大阪大学)
午後:当日の授業実践・テーマに関する研究協議
 ここ最近の傾向ですが、生徒の質問が本質を問うような質の高いものになっています。今年度も、例年通り、質の高い質問が出されました。
 それに引っ張られたのか、先生方の質問もかなり活発になっている様子がうかがえました。午後の研究協議では、午前中のうちに、生徒と先生方にグーグルフォームに質問を投稿していただき、その質問に基づいて質疑応答を進めているのですが、時間内にすべての質問を紹介することができませんでした。質問していただいた生徒、先生には申し訳ないと思うと同時に、それだけ多くの問いが出されたということを喜ばしく思います。
 来年度は、15世紀。16世紀(もしくは17世紀まで)のユーラシアを扱う予定です。今年度以上に、質の高い会にすべく早速準備を始めています。ぜひ一人でも多くの方に参加していただきたく思います。