神奈川県高等学校教科研究会

社会科部会地理分科会活動報告(社会科部報第95号より)

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夏の県外野外調査(計画)
昨年度の夏の宇都宮県外野外調査に引き続き、本来であれば8月7〜8日に熊谷市及び秩父方面への夏の県外野外調査の実施が予定されていたが、参加希望者が予定した人数を大きく下回り10名に満たず、今年度は中止の運びとなった。希望者減少の理由として、募集案内の伝達不足や猛暑日が予想される中での8月初旬の熊谷市内の徒歩移動などが参加者減少理由として考えられた。
今回の反省を踏まえて、来年度実施に向けて、日程の変更・バス移動の検討・研修内容の精選など、参加希望者のニーズに合った内容として熊谷市での県外野外調査の実施を委員会として再募集したいと考えている。
そこで来年度の実施のPRを兼ねて本年度実施予定であった研修内容について紹介しておく。
1.ラグビータウンとしての地域振興
熊谷市は全国的にもラグビーで熱い街として知られ、ラグビータウンとして、 日本全国からファンが来訪する。占くは1991年全国高校ラグビー選手権大会で熊谷工業高校が全国制覇をした歴史があり、1991年に改修した熊谷ラグビー場はワールドカップ大会誘致に成功し、それ以降は日本のトップリーグ(リーグワン)の埼玉パナソニックワイルドナイツのホームタウンとして、クラブハウス・ホテル・スポーツ施設を有するラグビータウンの拠点となっている。
市のスポーツ振興課は官民一体型の地域拠点のモデルとして宣伝をしています。来年度は講話だけでなく、試合がなければラグビー場の見学も可能であると話されていた。
2.熊谷地方気象台
熊谷市は全国的に暑い街であることは知られているが、2018年夏に最高気温41.1度と国内観測史上最も高い気温を記録した歴史があり、気象台では内陸都市としての観測データーの閲覧や年間の熊谷の気象の特徴の話を伺うことができる。
また、市内のデパートの前に大きな温度計を設置したり、駅にミストシャワーの配備、かき氷販売のPRと署さを逆手にとり街の観光化に一役買っている。
3.片倉シルク記念館
片倉工業株式会社最後の製糸工業であった熊谷工場の繭倉庫を利用して創設された記念館で経済産業省の近代化産業遺産に認定されている。創業当初の製糸機械や資料があり、丁寧で分かりやすく管理員も駐在している。
4.星川・星渓園
荒川の洪水で堤が切れ、池が生じその池の湧水を水源とする湧水の水路が星川であり、回遊式庭園となっているのが星渓園である。いずれも熊谷市内のシンボルとなっており、街並み観察のボランティアガイドと共に夕方に散策することが可能である。
5.埼玉県立自然の博物館(長瀞町)
秩父ジオパーク内の長瀞に位置し、秩父の目然史の解説の充実した博物館で古秩父湾時代の地層・地質・生物群の学芸員による解説・観察が可能である。
6.秩父太平洋セメント三輪鉱業所
武甲山の石灰岩産出する工場と秩父鉄道で太平洋セメントの熊谷工場までの輸送中継を行う現地事業所、セメント工場の原料供給地としての立地条件やセメントエ業の歴史など見学・案内が可能である。
以上簡単ではあるが、今夏の実施予定の研修事象について紹介した。来年度の実施に向け内容を再検討していきたいと考えている。内容についてのご意見・要望はお近くの野外調査委員までお声掛け下さい。
なお、2023年に埼玉県高等学校社会科教育研究会地理部会が夏季巡検として鉱工業にフォーカスした秩父巡検を教員・生徒参加で実施しており、報告書も出来上がっている。埼玉の先生と情報共有・協力を視野にいれた実施できればとも考えている。
(県立横須賀大津高校 的野宗雄)

『地理紀要』第39号の発行
研究成果をまとめた「地理紀要」は、10年ほどCD―Rで発行していましたが、コロナ禍で途絶えていました。再刊にあたり、見やすさや保存性をふまえ、冊子とインターネットの両方で提供することにしました。すでに3月の地理分科会研究発表会、5月の社会科部会春季研究大会で配付しています。インターネットでは、下のQRコードからご覧いただけます。
12月・1月に予定している野外調査
すでに募集要項は各校に送付済みです。2つともメールによる申込みとなっており、締切は秋季野外調査が11月21日(金)、冬季野外調査が12月5日(金)となっています。皆様のご参加をお待ちしています。問い合わせは、秦野総合高校の能勢までお願いします。
(メール:h-nose@pen-kanagawa.ed.jp)
では、それぞれの見所をご紹介します。
・12月予定 秋季野外調査(鶴見川巡検)
鶴見川は、洪水が多発する河川でしたが、ここ数十年で地域の開発と水害対策が同時に進められました。そこで、鶴見川の多目的遊水地を訪れ、「防災」の単元でも活用できる内容を調査する予定です。「地域防災施設 鶴見川流域センターでは、施設見学と職員の方からのレクチャーを予定しています。また、遊水地ともなるように設計された「国産スタジアム地下駐車場」では、具体的に洪水対応の様子を見る予定です。
・1月予定 冬季野外調査(秦野巡検)
秦野盆地は、神奈川県唯一の盆地にして、最近の研究で海面下300メートルまで至る深い盆地構造と宮ヶ瀬ダムの約4倍とも推計される賦存量の地下水が明らかになった特殊な盆地であり、扇状地における土地利用を観察することもできる地域です。
この巡検では丹沢山地の隆起、丹沢山地から堆積した複合扇状地、大磯丘陵の隆起と断層運動による沈降といった盆地の形成過程を丘陵地から観察し、「防災」の単元で活用できる内容として、関東大震災で形成された震生湖と地すべり被害を偲ぶ災害伝承碑も観察します。
また、「地域調査」の単元の内容として、盆地内で扇状地の地形と土地利用を観察します。具体的には、扇央で作られる落花生や扇端の湧水を利用した産業(明治時代創業の落花生や豆腐の老舗も訪問予定)、湧水を公園化して整備した新興住宅地、江戸時代から昭和まで秦野盆地の特産品であったタバコ産業で発展した街並みを観察します。
(県立秦野総合高校 能勢博之)
(県立伊志田高校 関口圭)

「モンゴル海外研修報告と教材化への提案」発表
地理分科会研究発表会(2025年3月)と社会科部会春季研究大会(2025年5月)にて、2024年夏に実施した「世界一密でない国モンゴル研修」の報告と教材化への提案を行った。行程等は、部会報第93号にて報告させていただいたので、そちらを参照いただきたい。ここでは、発表会。研究会での報告をさせていただく。また、当日配付資料は、前出の2次元コードから参照いただきたい。
1.羊の解体体験,現地での食事から
参加者に帰国後行ったアンケートで、最も満足度が高かった体験は、羊の解体であった。遊牧民は、大切に育てた羊の命をいただき、命を繋いでいる。また、滞在中の食事は、肉・肉・肉・・・であった。このような体験から「なぜ羊なの?」「農耕はしないの?」の問いから、遊牧をテーマにした授業展開を提案した。
2.グル訪問体験から
2軒のお宅に訪問し(うち1軒には徒歩・馬にて向かった!)、遊牧生活を見せていただいた。また、グル泊を体験した。ここから「なぜゲルごと移動するの?」「遊牧の近代化」「赤い食べ物、白い食べ物とは?」などのテーマでの授業展開を提案した。
3.雨のモンゴル体験から
6日間のうち、3日も雨に降られるという貴重な体験をした。が、雨温図を見れば、6〜8月が雨季であることは分かる。そこから、「雨季・乾季は何月?」「雨季・乾季の風景」「砂漠化の進行」などのテーマでの授業展開を提案した
4.ウランバートルでの体験から
チベット仏教寺院や旧国営デパート、郊外に広がるゲル地区などを訪れた。また、あちこちに韓国資本が入ってきていることを目の当たりにした。その体験から、「市場経済に移行して何が変わった?」「都市への人口集中」「日本企業にビジネスチャンスはあるか?」などの授業展開を提案した。
(サレジオ学院高等学校 小川 剛史)