野外調査委員会 ・栃木県野外調査報告 8月8日(木)〜9日(金)の一泊二日で,宇都宮市・芳賀町・鹿沼市をフィールドとする野外調査が,コロナ禍を経て5年ぶりに行われ,8名の参加者が得られた。この紙面を借りて,その調査内容を報告する。 @ 宇都宮ライトライン 宇都宮ライトラインは,1992年の構想開始から32年の年月を経て,2023年8月26日に開業した,第ニセクター方式の新世代型の公共交通機関で,日本国内の路面電車路線としては万葉線(富山県)以来75年振りの新規開業である。 |
![]() (上)車両基地と参加者 |
JR宇都宮駅西口の「交通未来都市うつのみやオープンスクエア」において事前のレクチャーを受けた。予定時間を超えて,熱心に質問をする参加者多数が見受けられ,関心の高さがうかがい知れる状況であった。 その後,平石停留所で下車後,徒歩で車両基地に向かった。ここには,他に本社と管理センターの建物も設置されている。また,平石停留所には,沿線に何か所かある地域の交通の結節点としての機能もあり,無料の駐輪場や駐車場も設置されている。 A 芳賀工業団地管理センター 芳賀町工業団地管理センターは,芳賀町工業団地(総面積248ha・立地企業102社)の中心部に位置し,工業団地の立地企業並びに地域住民の公共的利便施設である。同センターの名まえを冠した駅前にあり,こちらも地域の交通の結節点にもなっており,バスやタクシーの発着点にもなっている。 B リブドゥーコーポレーション栃木芳賀工場 同社は,愛媛県四国中央市に本社を置く,紙おむつや医療用製品等の製造・販売等をおこなう企業である。芳賀工場は主として東日本向けの製品を製造し,管理センターの道路をはさんだ向かい側に,広い敷地を有している。会議室で説明を受けた後,オートメーション化された工場内を見学し,会議室に戻った後,実際に紙おむつの貯水機能を試す実験を見せていただいた。 C 大谷資料館 大谷資料館は,栃木県宇都宮市大谷町にある大谷石採石場跡に関する博物館である。徒歩で地下にあるかつての採掘現場に入ることができ,坑内は夏は約12℃冬は7℃と一定の気温に自然に保たれている。採掘現場ではあるが,観光地化され幻想的な世界が地下に広がっている。そばには大谷石に刻まれた仏像を拝観できる大谷寺もある。 D 株式会社大張 同社は,赤城山からの火山噴出物を生かした,赤玉・鹿沼土をはじめとする土の製造メーカーであり,採掘から残土処理場として残土処理を業務としている。 |
![]() (上)「焼成」された輸出用の鹿沼土 (虫卵・昆虫などが含まれなくなった状態) |
最初に,土の大きさを選別する工程や袋詰めにする工程のある作業場を見学したあと,同じ敷地内にある土を乾燥させる屋根付きの場所や輸出用に「焼成」をされた土の保管場所を説明を受けながら移動した。すべて屋外の施設のため,参加者は汗だくになりながら,熱心に質問をしていた。その後はバスで移動し,実際の土の採掘現場を見学した。山の中を想像していたが,実際には住宅地の中の空き地にあったのは驚きであった。 E 旧大谷公会堂・カトリック松が峰教会 宇都宮市内にある大谷石を使った代表的な建物である。旧大谷公会堂は、宇都宮市の倉庫として使われていたが、現在は移築され観光施設となっている。松が峰教会は市街地にあり,今なお現役の教会である。 F おわりに お盆休み前の忙しい時期にも関わらず,会社見学を快く引き受けていただいた関係者の皆様には,この紙面を借りて厚く御礼を申し上げます。 (県立大船高等学校 山中 政志) |
海外研修委員会 世界一密でない国モンゴル研修2017年の「青蔵鉄道で行く中国・チベット研修」以来,停止していた海外研修。7年の充電期間を経て,ようやく実施することができた。 2024年7月29日(月)〜8月3日(土)の5泊6日,29名の参加者とともにモンゴルを訪れた。以下,行程に沿って,報告する。 1日目 7月29日(月) 移動日。成田空港からMIATモンゴル航空で5時間40分のフライト。前日28日が千秋楽であった大相撲名古屋場所で優勝した照ノ富士ほか,3人のモンゴル人力士と同じ便であった。 2日目 7月30日(火) 午前は,モンゴル紙幣の肖像になっているスフバートルの旧宅が博物館となった市立博物館訪問。続いて,地理の教科書ではお馴染みのゲル地区訪問。ゲル地区では,日本人抑留者たちが堀った石切場跡を,私費を投じて整備したウラジさんの案内で回り,その後,同地区の市場(ザハ)訪問。 午後は,郊外のツーリストキャンプに向かう。途中,高さ12mのチンギス・ハーン騎馬像パークに立ち寄る。ツーリストキャンプでは,羊の解体を見学。その後,大草原の中で乗馬,町村見学,遊牧民ゲルを訪ねて乳しばりなど各々オプショナルを体験。夕食は,昼に解体した羊で作った伝統料理ホルホッグを頂く。ゲルに宿泊。 3日目 7月31日(水) 朝早く起き,人工物が視界に入らない大草原の地平線から昇る日の出を眺める。朝食後,1,000頭の羊を飼育する遊牧民のお宅を訪問(ゲル)し,馬乳酒を頂く。その後,ステップのモンゴルにおいて珍しく木々が生い茂るテレルジ国立公園に向かう。近年韓国からの観光客が多く,観光開発が進んでいるとのこと。108段の石段を上り,チベツト仏教のアリヤバル寺院訪問。寺院からはU字谷が眺められた。 午後は,ウランバートル市内に戻る。小グループに分かれ,日本語を学ぶモンゴル人学生の案内で市内散策。その後,ホーミーや馬頭琴などの民族舞踊コンサート鑑賞(オプション)。 4日目8月1日(木) 朝から雨。ウランバートルの年降水量は277mm(『データブック オブ ザ ワールド2023』より)。降水は,夏に集中するので,雨が降っても何ら不思議なことではないが,貴重な体験となった。道路には側溝がなく,大きな水たまりがあちらこちらにできていた。 午前は,苫小牧に本社を置くコンクリート会社AIZAWA訪問。その後,韓国資本で植林事業が進められている地区を見学。 午後は,元横綱日馬富士が経営するハルマフジミルクファーム訪問。フランスから20日間かけて列車に揺られて来た乳牛たちとご対面。その後,モルツォグ砂丘を遠望。雨降るウランバートル市内に戻り,JICAの講義を受ける。 |
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5日目 8月2日(金) 前日に続き午前中は雨。モンゴル抑留中に亡くなった約1,700名の慰霊碑が建つ日本人墓地跡訪問。続いて,ボグド・ハーン5世によって建立されたチベット仏教のカンダン寺訪問。朝の読経が行われていた。五体投地を行う人もおり,前回チベットからの参加者にとっては,点と点が線で結ばれた瞬間であった。ウランバートル中央駅では,タイミング良く中国行きの貨物列車が通過。午前最後は,タイガの南限(ザイサンの丘)訪問。地理屋は,このような境界に魅力を感じ,雨が降りしきるのも忘れ,針葉樹林の列(境界)にカメラを向けた。 午後は,カシミアエ場見学。800人が働き,ここで生産された製品は,日本を始め,世界各地に輸出されている。続いて,ボグド・ハーン8世が晩年を過ごしたボグド・ハーン宮殿。最後は,社会主義時代の旧国営デパート・ノミンデパート訪問。7階建ての大きなデパートで,食品から生活雑貨,お土産品などがそろう。 6日目 8月3日(土) 移動日。7:45チンギスハーン国際空港から帰国の途につく。モンゴルの気温・湿度に慣れてしまった身体に応える暑さの成田空港にて解団式。それぞれの家路についた。 (サレジオ学院高等学校 小川 剛史) |